茶筒の蓋をパカッと開けて、サラサラと急須の中に茶葉を入れる。
本当はお茶うけにするつもりだった和菓子は、もうあたしと武さんのお腹に入ってしまった。
う~ん、何にも無いのは寂しいなぁ……
「花乃、戸棚の中にケーキが有るので、それも出して下さいね」
那月さんの声が、外から聞こえる。
「はーい?」
ケーキなんてあったっけ?
もう一度戸棚を開けると、急須とは反対側に白いケーキの箱が見えた。
あらら……それにしても今日は、とことんちくはぐな日なんだね。
和菓子にコーヒー、煎茶にケーキ……
それでも、美味しそうなパウンドケーキを取り出して、包丁とまた板を出す。
「包丁とまた板を用意してから、ケーキを出すんですよ」
……見てたんだね?
振り返ると、戸の側に那月さんが立っているのが見えた。
逆光で表情は見えないけれど、あたしを笑っているに違いない。
「ケーキが有るなら紅茶にしたのに」
「大丈夫ですよ。抹茶と小豆のケーキですから」
包丁を入れると、抹茶の緑の中に小豆色がちらほら。
確かにこれなら煎茶でも合いそう。