「何をしてるんですか?」


……那月さんは後ろにも目があるんですね。

ちょっと残念に思いながら那月さんの側まで行くと、何故か面白そうに笑っていた。



「この森に、花乃が入ったくらいで分かってましたからね?」


なんか感覚が鋭くなってやしない?

相変わらず、那月さんに隠し事は出来ないって訳ね。


割った薪が山積みになっている隣の、まだ割っていない丸太に腰を下ろすと、那月さんも隣に座ってきた。



「あっ、汗臭いですか?」


額や首筋を流れる汗を拭う姿も、なかなか色っぽい。


「うん、でも……嫌いじゃないかなぁ」


「……汗フェチですか?」


「違います!てか……そんなのあるの?」


「どうでしょう?広い世の中、どこかにはあるんじゃないですか。
あっ、花乃が筋肉フェチらしいって事は知ってますけどね」


そうだっけ?

確かに綺麗だなと思うけど…

桜ちゃんもあんな可愛い癖に、腹筋割れてるし?

簡単に人を投げ飛ばせるんだもんねぇ……

あっ、あたしも鍛えた方がいいかな?



「花乃の百面相の内容は、大体分かりますけどね。花乃はマッチョになるより、もう少しお肉を付けるべきですよ」


「ぅ……やっぱり……」


もちろん、あたしの目線が落ちたのは残念な胸元。


「ですが、最近少し大きくなりましたよね?私の努力が報われたのかも知れません」


その爽やかな微笑みと、その手の動きはだいぶミスマッチですよ。


「……那月さんのえっち」


「草食系とやらのがお好みですか?」



そんな事無いのは知ってる癖に……

べーっと舌を出して立ち上がると、たぶん鉄瓶にお湯が沸いている筈の土間に入った。


やっぱり。

湯気を上げて、微かに音を立てる鉄瓶から一先ず離れて、戸棚を開けると急須と茶筒を取る。

いつの間にか、勝手知ったる台所になってるのが嬉しい。


……お勝手って言った方がしっくりくるかな。