「さて、帰ろうか」
「うん!」
お母さんに、もう一度挨拶をして、武さんの後ろをうきうきと小走りする。
「嬢ちゃん、ゆっくり歩かんとまた転んじまうよ」
後ろを振り返って笑う武さんに、了解と敬礼してみせる。
うん、また捻挫するのは頂けないからね。
でも、どうやら武さんの中ではよく転ぶ小さな子のままらしい。
まぁ……最近も転けてるけど……
「このまま如月窯かい?」
「ううん、この栗饅頭を明美ちゃんに届けてから」
「そんなら持ってあげるよ。明美も光と出掛けるから、もう居ないだろう」
あれ?いつの間にそんな話が?
これは、帰ってきた明美ちゃんを問いたださなければ!
「……嬢ちゃん、悪い顔してるなぁ」
「フフフッ」
だってねぇ?
スキップしそうになったのを、また武さんにたしなめられた。
そのまま栗饅頭を武さんに預けて、如月窯へ向けて道を曲がる。
また迷わないかって、少し心配されたけれど、日が出てて雨も降ってないから大丈夫!……な、筈?
木立の向こうに如月窯が見えると、音だけしていた薪を割る那月さんの姿が見えた。
そーっと近寄って……