「花乃、付いてますよ」


あたしの口の脇を、親指で拭う那月さんは、それだけなのにやたらと色気が駄々漏れです。

慌てて口元を押さえたあたしと、ふんわりと微笑んで見せる那月さんとを見比べて、呆れたように明美ちゃんが言った。



「イチャイチャするなら、はよ帰り~」


「では、そうさせて頂きますね」


那月さんはそう言うと、まだ大福を食べているあたしの手を引いて部屋を出た。



「んむっ」


「おや?大福が詰まりましたか?」


だ、誰のせいだと…!
ちょっと詰まり気味の大福を、なんとか飲み込んで吐息を漏らした。

ふぅ…苦しかった。



「花乃、花乃がちゃんと食べてくれる事は嬉しいんですけどね、少し甘いものの割合が多くないですか?」


「な、ないと思う…よ?」



那月さんは困った人だと笑いながら、あたしの鼻をムギュっと摘まむ。


鼻を擦りながら那月さんの後を追うあたしに、那月さんは思わぬ爆弾を投じた。