「……ここを出ていく時にした約束です。
花乃に一切連絡をするなと、私が言ったんです」
「……なんで?」
「なんででしょうねぇ…。
雪乃が死んで、花乃まで居なくなる事が、怖かったのかも知れません」
遠い目をするおばあ様は、どこか後悔しているようにも見える。
「でも、私も忙しくて花乃には寂しい思いをさせました。桜介が居なかったら……本当に可哀想な事を…」
そう、どんなに虐められても、どんなに寂しくても、桜ちゃんの存在があたしの支えだった。
でも……親ってものを、どこかで求めていたのも事実だと思う。
「…会ってもいい?」
「えぇ、もっと早くに言ってあげるべきだったんでしょうね。花乃が二十歳になったら、花乃の好きなようにさせると言う約束でした」
「あたし……もう二十歳じゃないけどね?」
「悩んだんでしょうよ。自分から連絡をしていいものかって」
じゃあ、お母さんの写真が切っ掛けを作ってくれたって事かな?
お母さんに助けて貰ったんだね…
お母さんの命日の数日後に、あたしは21歳の誕生日を迎えていた。