嫌がらせの手紙だったら、正直見たくはない。
でも、それを那月さんに押し付けてしまって良いんだろうか?
「別に嫌な手紙とは限りませんしね?」
「…那月さん中見える?」
「そんな能力ありませんよ。あったら……」
那月さん、涼しい顔してあたしの胸元見ないで下さい。
…ボリュームの無さに悲しくなるから……
「この封筒から嫌な感じはしませんけどね、花乃が開けたくないなら私が開けますよって事です」
「ん~……お願いします…」
微笑んだ那月さんは、いつの間に持ってきていたのか、薄い銀色のペーパーナイフで綺麗に封を開けた。
なんだか余計にドキドキしちゃうかも…
あたしから見えないように中を覗いた那月さんの眉が、一瞬ピクンと動いたけれど直ぐに表情は柔らかくなった。
「大丈夫ですよ」
微笑みながらあたしの手に置いてくれたので、あたしも抵抗無く手紙を開いた。
薄い水色の便箋の間から現れたのは
お母さんの笑顔だった。
「克也さんですね」
お父さんからの久しぶりの手紙。