「あっ!若女将ー!」


少し離れた所から、あたしを見て駆け寄ってくる光さん。

何かあったのかな?



「手紙と小包が届きましたよ。
今日は帰ってこないだろうと思って届けにきました!」


「それはどうも。さぁ用が済んだらお帰りください。花乃との時間を邪魔されるのは好かないので」



折角持ってきてくれたのに、那月さんの態度はかなりつれない。


それでも気にしていないのか、あたしに荷物を渡すとニコニコと手を振って帰っていった。



「…わざわざ持ってきてくれたのに……」


「まぁ、それはいいとして。
その小包は誰からですか?」


「あっ、桜ちゃんからだ!」


開けると中から出てきたのは、新しい写真集と個展の案内だった。

桜ちゃん個展なんてするんだぁ!


「じゃあ、この日はお休みにしてもらって、二人で行きましょうか」


「うん、初めての遠出だね?」


「楽しみですね。
手紙は誰からですか?」



桜ちゃんからの小包に気を取られて、手紙の存在をすっかり失念していた。


改めて見ると、宛名はワープロで打たれた無機質な物で、裏に差出人の名前は無い。

ちょっと気味悪いなんて思ってしまったあたしの手から、那月さんが封筒を持ち上げた。



「私が開けましょうか?」


「…う~ん………」


「こう言う時は、お願いって言えば良いんですよ」