お休み前の静かな夕べ、縁側でのんびり過ごすあたしと那月さん。
水うちわを片手に、ゆったりと座る那月さんは、それだけで絵になるんだよね。
「もう、夏ですね」
「うん、あっ!」
「どうしましたか?」
「……また食われた…」
なんであたしばっかり蚊に食われるんだろう…
今日はあたしも浴衣だし、露出は変わらないと思うんだけど。
「フフッ、蚊取り線香焚きましょう」
「ぶたさん?」
「えぇ、前に花乃が作ったでしょう?」
…あれは…あんまりぶたさんに見えないんだけど…
あの日は仕事をしている那月さんの側に居たくて、粘土を貰って隣でこねこねしていた。
蚊取り線香のぶたさんをイメージして作ったんだけどね…
「どっちかと言うと、くまさんですよね」
「…でも、しっぽクルンってしたもん……」
へたっぴなぶたさんは何故か前から見ると、くまさんに見えるんだよねぇ…
でも、しっぽはぶたさんだから……
あたしが微妙な顔をする脇で、那月さんがマッチで蚊取り線香に火を付けている。
「…火打ち石じゃないんだね」
「流石に普段使いはしませんねぇ。まぁ有るには有るんですけど」
有るんだ!?
驚くあたしの顔を見て、那月さんがちょっと悪そうに笑って見せた。
「あっ!嘘っ!」
「嘘じゃありませんよ?釜戸の隣にある棚を見てみてください」