結局バタバタと一泊だけした知花さまは、那月さんの丸ゆべしをお土産に元気よく帰っていった。

桜ちゃんも知花さまも、あれが好物何だって。

あたしは食べたこと無いのになぁ……



「…あぁ……花乃と一緒に食べる分が減ってしまいました……」


隣を見ると、本当にしょんぼりした那月さんが、恨みがましく知花さまが消えた方を睨んでいる。



「減ったって事は……まだあるの?」


「ありますよ。私の自信作ですから、花乃に食べて欲しいんですよ」


「ありがと……那月さんのお仕事が一段落したら、お茶でも点てる?」


「それは良いですね。花乃のお点前を見れるのは嬉しいです」



まぁ、お茶もお花もそれなりに足しなんではいますよ?

…お琴だけは……サボりすぎて…出来ませんけどね…



「いつも掃除しかしてない茶室が、喜びますね」


「えっ?茶室があるの?」


「えぇ、先代が奥さんの為に作ったそうですよ。私は会ったことがありませんが」



そう言えば…じいの奥さんはいた筈なのに記憶に無いなぁ。



「…美人薄命とはよく言ったものですね」


「うん…」



たぶん、那月さんが思い浮かべたのは、じいの奥さんとあたしのお母さん。



「花乃、長生きしましょうね」


「うん」


「仲良しなおじいちゃんおばあちゃんに成りましょう。花乃はおばあちゃんになっても可愛いでしょうね」


「フフッ、それまで一緒に居たいなぁ…」


「花乃が私を捨てない限り、一緒に居られますよ」



分かんないじゃないのって思いながらも、やっぱり那月さんの言葉は嬉しい。