「……ギューだけで良いの?」
「花乃、日に日に私の煽り方が上手になってますね。さて、今ここでと布団に戻ってとどちらが良いですか?」
ちょっと頑張って返した言葉に、何故か那月さんの眠そうな目がキラリと光った気がした。
「ストーップ!俺の前でおっぱじめるのは止めてくれよぉ?」
あっ、今日はカタカナですね。
昨日のはアルファベットだった気が…
突然現れた知花さまは、荷物を持って苦笑いを浮かべている。
「本当に存在そのものが無粋ですね」
「相変わらず俺には厳しいなぁ?」
「花乃以外に優しくする必要はありませんからね。十夢にあげるほど、私の優しさは安くありません」
この掛け合いはお互いに楽しんでいるんだと思う。
だから放っといて楓ちゃんと遊ぶ事にした。
あぁ、やっぱり子猫のふわふわ感には癒されるなぁ。
「もう帰るんですか?」
「あぁ、あんまりサボると翔がうるせぇからなぁ」
そっか…帰っちゃうんだ……
楓ちゃんから視線を知花さまに移すと、丁度こちらを見ていたのか目があった。
「寂しいかぁ?」
「うん、ちょっと」
「……十夢、辞世の句でも詠んで下さい」
少し寂しいなと思ったあたしは、知花さまに対しては珍しく素直に返事をすると、何故か那月さんが殺気だっていた。