「あぁ、如月くんいらなくなったら私に頂戴ね」
「い、いらなくなんてなりません」
玄関先で、不敵に笑う香澄さんに精一杯対抗しようと、つい下ろしたくなる視線を持ち上げた。
「あっそ。精々飽きられないように頑張れば?」
「…頑張ります」
こればっかりは、那月さんの心の動きだから言い切れ無いけどねぇ…
そんなちょっと弱気になったあたしの目の前で、いきなり那月さんの襟を掴んだ香澄さんが、驚いている那月さんにキスをした。
「ご馳走さま」
「なっ!」
慌てて口元を擦っているけれど、まるっきり油断していたのかまんまとキスなんかされちゃって…
落ち込みそうな自分を奮い立たせると、那月さんの首に抱き付いて上書きするようにキスをした。
そのまま目をパチクリしている那月さんに抱き付いたまま、香澄さんに向けてべーっと舌を出す。
「フフッ、じゃあね」
踵を返して送迎の車に乗り込んだ香澄さんに、先に車に乗っていた小野先輩が、半泣きで抗議をしている。
そんなに好きなら、あたしをナンパなんてしなきゃいいのにね…