「また来ていーかな?」


「その時は、長期のお休みを頂くので、事前に連絡をお願いします」


「え?長期の休みとって俺と居てくれんのー?いいね、いいね!」


どこをどう勘違いしたら、そこまでポジティブになれるんだろう。

ある意味羨ましい人だ。



「最初から最後まで、顔も合わせたくないので外出します。その間月守旅館をご堪能下さいませ」


「え?」


「来てもいいけど、その時に私はいませんよって言われてるのよ。理解できた?」



ポカンとしている小野先輩に、香澄さんが通訳してくれる。

今は存在に感謝します。

ここまでポジティブな人に、説明するのは面倒で。



「怒って…んの?」


「お付き合いしている人が居るって言ったでしょ?小野先輩に未練なんて微塵もないから」


敬語を使って回りくどく説明してもなかなか通じないみたいだから、ここはタメ語で行かせて貰います。

やっぱり意味が分からないというように、パチパチと無駄に瞬きをしている。



「まだ花乃は俺が好きだって断言してたけど、この山奥にはいい男が居て、あなたなんて忘れられてたのよ。OK?」


「か、香澄~」


「あなたには、私くらいでお似合いよ。
帰るから荷物をまとめなさい」


香澄さんに言われて、まだよく理解出来てないみたいだけど、いそいそと荷造りをしている。

うん、確かにお似合いだと思う。
小野先輩も黙ってれば見れない訳じゃないしね。

でも…なんで那月さんを好きだった香澄さんが、こんな小野先輩が良いのかは謎が深まるばかりだけど。