「那月さんが仕事してるの見てみたい。
遅くなると思うし…明日も早いから那月さんの背中見たら寝ちゃうと思うけど…いい?」


「えぇ」


微笑んで頷いてくれる那月さんも、やっぱり少しはホッとしたみたい。

気にしないよ?いつでもあたしを見て欲しいけど、那月さんの器も好きなんだもん。

あたしも月守旅館を捨てることなんて出来ないし、何かに真っ直ぐに向かう姿は、それだけで魅力的な物なんだから。



「…あの……小野さまが謝りたいんやって……」


気まずそうな声が聞こえて、いつもとは比べ物に成らないくらい明美ちゃんが大人しいのは、多分那月さんの殺気の影響だろう。

それもその筈、小野先輩の名前を出した途端、またも那月さんの瞳に剣呑な光が宿った。



「那月さん…未遂だし……ね?」


「骨の一本など甘いものですね。
一生機能しなくしてやりましょう」



何を?とは聞けない雰囲気が漂っているけれど、小野先輩と現れたのは知花さまで、那月さんの取り押さえ役をしてくれるみたいだ。


「…ごめん、妬いたんだ」


単刀直入に切り出した小野先輩は、いったい何に妬いたっていんだろう。

やっぱり香澄さんと居る那月さんに?


「何にも言わずに大学辞めちゃったしさ。
接点無くなってから気付くみたいな~?」


何にどう気付いたって言うんだろう。


「香澄も好きだけどさ、花乃の事も忘れられんないんだ!あっ、嬉しい?」


あたしの斜め後ろでは、知花さまが一生懸命那月さんを宥めている。