「焼きもちって物は、妬かれる側からするとなかなか美味しいものですね」
「…那月さん……」
「すみません、でも花乃が可愛いのがいけないんですよ?」
あれ…?なんでかは分からないけれど、頼りなげな那月さんは影を潜めて、いつもの那月さんがこんにちはしてますけど…
あたしの手をそっと撫でる指先は、少しカサついていて爪の間の取りきれていない粘土が、さっきまで仕事をしていたのだと告げている。
那月さんは大きな仕事が来て、はりきっていた筈のに、仕事に集中出来て無いんじゃないかな…
ちょっと申し訳なくて、その長い指がライアーを引く時に映える手を、そっと包み込んでみた。
もちろん手の大きさの違いを見れば、包み込めない事は分かっているんだけど……気持ちとしてはって感じかな。
「花乃、そんな可愛い事をしてくれると、このまま連れ去りますよ?」
「…いじわる」
「おや?何が意地が悪いような事を言いましたか?」
「だって……行きたいけど…」
仕事もあるし、那月さんの仕事の邪魔はしたくないし…
でもね、仕事をしている那月さんって言うのも見てみたいんだよねぇ。
「仕事が終わったら来ますか?
私は夜寝ないかも知れないですし、かまってあげられないかも知れないですが、それでも良いのなら…」
言ってるうちに、なんだか困ったような顔になっていく。
言ってる側から後悔?
「あー……今のは忘れて下さい。
良い訳無いですよね…」
あっ、そう言う事ね。