「そうでしょうね、武さんが花乃に包丁を持たせなかったんでしょう?」
「えっ?」
「別に『視た』訳じゃないですよ。
なんせ、十夢や桜介からあなたの話はよく聞いてましたから」
…知花さまとは、あんまり話した記憶が無いんだけど。
あたしに睨まれた事でも話していたんだろうか…
そんなことを考えながらもパスタを食べる手は休めない。
だって、美味しいんだもん!
「ここで、料理を覚えますか?
まぁ、私が作りますので花乃が無理して作る事は無いんですけどね」
…あたしの女子力の低さが……
「花乃は、十分女の子らしいですよ。ただ…」
「ただ……?」
「今度一緒に買い物に行きませんか?」
「はい?」
なんでそんな話になったのか流れがさっぱり分からないんですけど…
それに……
「那月さん、人混みに行っても大丈夫…?」
「花乃と一緒なら大丈夫ですよ。
花乃に全神経を向けているので、他の雑音は聞こえて来ませんので」
そ、それはそれで恥ずかしいけど…
でも、那月さんとはそんな普通のデートは出来ないのかな?って思ってたから嬉しいな。
優しくあたしを見つめてくれる那月さんの瞳に、無理している色がなくて安心した。
でも…今の流れからすると、やっぱりあたしの格好には色気も可愛げも足りないらしい。
…分かってたけどね……
てか、格好だけ変えても意味があるんだろうか?
着る本体に可愛いげも色気も無いんですけど…