「花乃、ごはんは食べましたか?」


「…軽く?」


「食べて無いんですね。私もまだですから、一先ず夕食にしましょうか」


食べたもん!…すももを2つ程……
庭に生えてる大きなすももの木から、赤そうなのをもぎったんだけど、まだ早かったみたいで、かなり酸っぱかった……



「すももじゃあ夕食になりませんよ。
それに、まだ早いんじゃないですか?」

「あ、あれ?」


「花乃を抱き締めた時、すももが浮かびましたから」


良かった…声に出してた訳じゃないみたい。

でも、そんな那月さんならではの感覚は純粋に羨ましい。

だって、那月さんはあたしの事が分かるのに、あたしはついさっきまで那月さんがろくろを回して居たのか、それとも粘土を捏ねていたのかすら分からない。

ちょっと不満に思いつつも、柔らかな笑顔の那月さんをみたら、どうでも良くなってしまうあたしは大概単純だ。




そんな事を考えている間に、那月さんは土間の釜戸で何か作っている。

あっ…美味しそうな匂い…が……


クゥ~


「ククッ…」


うぅ~、恥ずかしすぎる!
食べてきたって言ったのに、美味しそうな匂いにつられてお腹が鳴くなんて…

恥ずかしすぎて顔から火が出そうだ。

堪えてる振りだけしてる那月さんは、クスクス笑いながらお鍋に何か入れている。



「さて、花乃に催促されましたし食べましょうか」


…お腹が勝手に催促したんだもん。