新しく入った光(ひかる)さんは、武さんの甥っ子で

小さい時から武さんに憧れて、一旦外で修行にした後、武さんに頼み込んで弟子にして貰ったそうだ。

板場に事は武さんに任せているおばあ様は、それはいい人が入ったこと、と喜んでいた。

あたしも真っ直ぐな光さんの人柄は信頼出来ると、今では心を許している。

…最初はちょっと緊張したけど……



あっ、ついでに言えば那月さんより1つ年下で、桜ちゃんや知花さまとも面識はあるそうだ。

別段親しかった訳ではないらしいけど…

なんせ那月さんなんて話し掛けられても、さっぱり思い出せなかったくらいだから。



…今日は如月窯に行こっかな……
那月さんに会いたい。



「花乃っ!何してんねん!」


「あっ、はい!」


お膳を持った明美ちゃんに急かされて、慌てて板場に向かった。

朝ごはんをお運びしなきゃっ!

付き合ったばかりだって言うのに、ゆっくり色惚けてもいられない…


「武さん、梅の間のお膳って出来てます?」


「ほいっ、落とさんように気を付けてくだせぇ」


…武さんの中では、あたしはお膳を運ぶのもやっとだった頃から成長していないらしい。

そりゃあ、あんまり成長してないけど……特に…

着物を着ると更に存在感が薄くなる胸元に、悲しみの視線を落とした。