「あっ、あのですね…」


どもるなっちゃんなんて珍しい物を見れたなぁ。
なっちゃんも、この目には弱いってか?


「……言わなきゃ分からない事ってあるんですよぉ」


それだけ言うと、固まってるなっちゃんからは視線を反らして翔を見上げた。


「なぁに~?るぅちゃん」


「十夢さんにごはん食べさせたいよぉ」


「いいよ~、じゃあちょっとお願いしてこよっか?」


相変わらず瑠璃には甘い奴だなぁ。

立ち上がった翔について、瑠璃も部屋を出ていってしまった。

…まぁ、板場の場所くらい覚えてんじゃねぇかなぁ?



二人が出ていった途端、ゆっくりと花乃ちゃんが起き上がった。


「か、花乃?」


「すみません、ちょっと起きづらくて…」


髪を整えながら苦笑いして見せた。

泣いたから目が少し赤いけれど、スッキリしたように見える。


「那月さんでも、言い返せない事があるのね…?」


「そうですね、あんな純真無垢な瞳は久しぶりに見ましたよ」


「フフッ、あたしも困っちゃいました…
あんなキラキラした瞳、とっくの昔に無くしちゃったから…」


「私は、花乃の瞳の方が好きですけどね?」



「…………職場放棄しちゃってたので戻りますね。すみませんでした」



花乃ちゃんは、少し黙った後に切なげな微笑みを残して部屋を出ていった。