たぶん、大澤さんの年齢は桜ちゃん位だと思う。

さて、このちっちゃいのは…?

女子高生…?

えっと…なんだか犯罪の臭いがするんですが…



あたしが悶々と考えながら、それでもお湯に気を配ってお茶を煎れていると、知花さまが電話をかけ始めた。


「あっ、なっちゃん?
前に言った翔達が来てんだよぉ。なっちゃんも来てくんねぇ?」


何を言われたのか顔をしかめながら、通話を切った知花さまに声を掛ける。


「那月さん来られ無いって……?」


「いや?来るってよぉ?」


なら何であんなに顔をしかめていたんだろ。
まぁ、那月さんが来るなら何でも良いんだけど…


「なっちゃんって……従弟だっけ~?」


「いや、もちっと遠いかなぁ。
じいさんの弟の孫だから……」


「再従弟って事~?」


「あぁ、それだ」


大澤さんに返事をする知花さまの言葉にビックリして、思わず茶漉しを落としそうになった。


「大丈夫かっ!?」


「あっ、大丈夫です。
それより再従弟って…お二人血縁関係あったんですか?」


全っ然似てないじゃんっ!

手を滑らせた性で必要以上に慌てさせてしまったけれど、今あたしはそれどころじゃない!


「そうですよ?知りませんでしたか?」


「ひゃぁあ!」


「色気の無い声ですね」


「…いつから居たんですか?」


知花さまに聞いたのに、直ぐ後ろから那月さんに返事をされて、思わず変な声が出た。

…確かに色気なんて持ち合わせていませんよ。


「十夢から電話を貰ったのは、板場の裏口付近で武さんに捕まってた時ですから。

頑張りましたね」



武さんに事の真相は聞いたんだろう。


恐怖に震える心を奮い立たせて、決死の覚悟で挑んだ事だったけれど

あの後のバタバタに紛れて息をつく暇も無かったと、那月さんの言葉を聞いて涙がこぼれた。


…直ぐに泣くのは卒業しようって、決めたばかりなのに……



「そんな一気に頑張ったら、いずれ糸が切れますよ。一つ一つで良いんです」


「……うん…」


「今日の一つは、とても大きかったんでしょう?
今は月守旅館の若女将じゃなくて、花乃に戻っていいんですよ」


あなたは、あたしの背中を押してくれて、こうやって甘やかしてもくれる。

回りの人とか、今の状況とか、みんなどうでも良くなって広げてくれた腕の中に飛び込んだ。