ずっと、ずっと聞きたかった桜ちゃんの声を、電話越しとはいえ聞くことが出来た事に安心して、その場に膝をついてしまった。
「…桜ちゃん」
『花乃、何があったの?
ごめんね、勝手に飛び出したりして…花乃に皺寄せが行って大変だったよね?』
事情が分かってない桜ちゃんは、何やらのんきな事を言っている。
「な、永野絵里が……」
『アイツがどうしたの?』
「押し掛けてきて……」
そこからのあたしの説明は支離滅裂だったと思う。
泣きながら……
おばあ様は洗脳されちゃった事
高飛車な接客に常連さまが離れてしまった事
桜ちゃんの部屋にも勝手に入ってる事
知花さまに迫ってる事
知花さまや武さんに会わせて貰えない事
嫌がらせをされる事
部屋を追い出された事 ……
自分が居なくてもいい存在だと思える事。
所々あたしの話を促しながら、聞いてくれた桜ちゃんは、事態の深刻さに呻き声をあげた。
『…花乃、ごめん。直ぐに帰るから!
後ちょっと頑張ってくれる?』
「う、うん…ヒック……」
『那月に代わってくれる?』
那月さんに電話を渡すと、那月さんは当たり前みたいにあたしを抱き締めてくれた。
那月さんの胸で泣きながら、桜ちゃんに明美ちゃんの事を言い忘れた事を思いだしたけれど……
自分で呼んだんだし分かってるよね?とそのままにした、だって今更話せる気がしない。