「花の香りの香水を付けるなんて、女々しいと思いますか?」
「いいえ、だって…那月さんにとても似合ってるもの」
凛とした和風の那月さんに、不思議とあの甘い香りはよく合っていると思った。
一見甘いし?実はけっこう辛口でSだけれど…
「ここの庭に咲くのは、八重のくちなしです。ガーデニアと呼ばれる方ですね」
「八重と…そうでない物はどう違うんですか?」
「実が付かないんですよ。八重咲きには」
実…?
「あぁ、きんとんに使う…」
「そうですね、あれは一重の物から取れるんです。
花乃、今日初めて十夢から事情を聞きました。もう少し早く知って起きたかったと、自分の閉ざされた人間関係を初めて悔やみました」
急に変わった話の内容に、着いていけなくて那月さんを見詰めると、先程と同じような苦しげな微笑みが目の前にあった。
「私は、知っているんですよ」
「なにを…ですか?」
なんでそんなに苦しそうなんだろう、なんでそんなに自分を責めているの?
「桜介の連絡先を、です」