しばらく押し問答を繰り広げたあげく、那月さんが楓ちゃんに猫パンチを食らうという終わり方をした。
「足…痛くないですか?」
「大丈夫です」
心底残念そうな顔をするこの人は、いったい何を考えてるんでしょう…
着替えるようにと、連れてこられたのは奥の小部屋、そこには桜ちゃんの写真があった。
桜ちゃんが撮った、知花さまの写真が。
「十夢には…言わないで下さいね?」
決まり悪げに口元に手を寄せる那月さんは、何だかイタズラを見付かった子どもみたいだ。
そっか…これを見られたくなかったんだね。
「はい、…桜ちゃんは知って……?」
「奴が旅先から送ってきた物です。
…わざわざ額に入れて飾ってるのは、知られたく無いですけどね…」
「ふふ、知花さまの事が大好きなんですね?」
さっきのお返しとばかりに、冷やかすような視線を送るとクルリと向きを変えて部屋を出ていってしまった。
でも、その背中が恥ずかしがってるようで、何でだか怒らせてしまったとは思わなかった。
「あっ、花乃のサイズの服は無いので、それを着てきて下さいね」