最初は誰かが嫌がらせで紙くずでも挟んだのかと思った。

でも、丁寧に畳まれた紙には何が文字が書いてあるみたい。

そっと開いてみると、見たことのない特徴的な筆跡で書かれた手紙だった。



『花乃ちゃんへ。

必ずモモが届けてくれると信じてこの手紙を託します。
あの女は猫が苦手らしいし、桜介が居ない今、モモが触らせる人は俺と花乃ちゃんだけの筈だからな。

さて、同じ建物の中に居るのに、元気ですかってのは可笑しいが、それくらい会えてない事が心配です。ちゃんと食ってるかぁ?

俺はどうやらあの女に見張られているらしい。暇なこった。


昨日、イタリアの友人から桜介の目撃情報を貰った。
連絡がつくように動いてもらってる。
だから、あと少し頑張って欲しい。

あと、本当に危なくなったらなっちゃんの所に逃げ込んだらいい。
俺からも頼んでおくから。


P.S
俺との連絡は、これみたいにモモに手紙を付けても良いんだが、それだといつになるか検討がつかない。出来ればこのアドレスにメールくれると嬉しい』



名前は書いていないけれど、文末に書かれた苺の飴のイラストが、まるで署名みたいだ。

あんな酷い言い方をしたのに、それでもこな風に気にかけてくれる人がいる。

取り合えず那月さんに会いに行く前に、しっかりごはんを食べよう。




モモを抱き締めたまま、明美ちゃんに話そうと廊下を急いだ。







「あんな言い方して、花乃ちゃん泣いてたぞぉ?」