だってさ、やっぱり痛かったり苦しかったりするのってイヤじゃん?





人よりすごく早く死んじゃうんだから、これぐらいの願いはかなえられてもいいんじゃないかなって思うんだ。





死ぬなら、寝ている間が良い。痛い思いも、苦しい思いもせずただ安らかに……。






「……何か、最近こんなことばっかり考えているような気がする」

「――何が?」

「わっ!?」






あまりに、暗すぎるそれにため息をつきかけたときいきなり背後から声がかけられ、わたしは飛び上がる。





勢いよく後ろを振り返ってみれば、そこにはひらひらと穏やかに手を振るお医者さんが一人。





綺麗な黒い髪に、銀縁眼鏡。羨ましいほど綺麗な白い肌に、少し目尻の下がった優しげな瞳。





ルックスはモデル並みで、白衣がとてもよく似合っている。




彼の姿を認めると、わたしは安堵の息を零す。






「何だ。佐倉(サクラ)先生か……。驚かさないで下さいよ」

「ごめん。驚かすつもりはなかったんだけどね、何か寂しそうにしてたからさ」





そんなに寂しそうにしてたかな?




そりゃ、死ぬことは考えてたけど……そっか。先生にはそういう風に見えたんだ。