今更だけど、携帯何処だろう。使う事は一切無かったけど、偶にかかる着信が今この時有っているのだとしたらまずい。


あたしは静かに唇を噛む。お願い、着信なんてありませんように。

脳裏で、名前の記された着信が画面に映し出される映像が思い浮かんだ。そしてそれに出ると―――


ガラ、と甲高い音をたてて扉が開いた。


あたしは半無意識にそちらに目をやり、御膳を持った同年代の彼が佇んでいるのを認識する。