俺は冷静に戻ると、カレーを煮ていたガスを消す。青い炎が消え、閑散とした空気になる。

ああそうか、これ要らなくなったんだ、と漠然と思った。


「あ、日向。」

「、っはい」


いきなり名前を呼ばれ、肩を震わせて返事をした。


それが拍子でわずかに指が鍋に当たり、熱さに声をあげかける。輔さんは楽しむように笑っていた。


「まだ此処に居ろよ?多分、ユウが引きずって来ると思うし。」

「――…」


その輔さんの言った通り、女は鶴来さんに連れ戻される事になるのを、俺はまだ知らなかった。