クツクツと、堪えきれない笑いを零す輔さん。違和感を覚えながらも、俺は目線を反らす。


脳裏で、あの女が裸足で逃げ出して行く光景が広がる。

それでも、裸足だろうと何だろうと凛々しく在るんだろう。俺には理解出来ない。


輔さんは「あー笑える。」と息を吐くと、飲んでいたコップの中身を全て空にした。本当に笑っているのだろうか。


この人は、鶴来さんの匂いがする。

冷たくて、情けの欠片もない、あの気配。