僕は火茂瀬の後ろに乗ることにした。

「しっかり掴まってて下さいよー?2〜30キロオーバーで行くんで」

「馬鹿野郎。一応刑事なんだからルールを守れ」

ヘルメットをかぶった頭は叩けないので、横腹に拳を一発入れておいた。

「冗談ッスよ。殴ることないじゃないッスかぁ」

殴られた横腹を摩りながら、後ろを振り返って火茂瀬は苦笑いを浮かべる。

「お前なら、やりかねないと思ってな」

見た目のチャラさや、考え方の適当さからして、有り得るだろう。

「心配しないで下さいよ。人の命乗っけてるんだから、そんな事しませんよ」

前を向いてしまったから表情までは分からないが、声の低さからして真剣な顔をしていると思う。