声をかけるべきか悩んでしまった。
生きている俺の慰めの言葉は、殺された奈々美には無意味だと思ったからだ。
『私を殺した人は……恨んでない。あの人は……あの人は、脅されてたから』
梓さんは知らないだろうが、藤川の取り調べ中に奈々美が部屋に居たのを俺は見ている。
妹のために殺したと泣き崩れる藤川を見て、部屋から消えて行った。
『3人が捕まればそれでいいと思ってた。だけど1人は逃げ出したわ。今も生きてるなんて許せない』
直接ではなかったにしろ、文月達に殺されたのと一緒だ。
俺なら3人とも死ねばいいと思うが、奈々美は捕まれば良いと言った。
優しい女性だから、依頼するのに抵抗があったかもしれない。
『貴方も……殺せる?』