「キス長いな。」

「そうだね。」

「いやぁすごい展開やな!川本の罰ゲームでこんなことに。」

「そうだね。」

あたしは今、光一君と体育館の裏の草の茂みに隠れている。

あのまま、あたし達は葵君を追って来たんだけど、光一君が隠れろと言うので隠れて見てたらこんなことに………。

「すごいね。マンガみたい。」

「…………。」

「光一君?」

光一君は真剣な顔をして下を向いている。

「明菜ちゃん。」

「はい?」

「俺も、総ちゃんみたく、がんばるから。」

「え?」

「いつか、明菜の頭の中を俺でいっぱいにしてやる。出来るかわかんないけど。」

「光一君……。」

「あはっ。片想いって辛いんやな。俺、片想いなんてしたことなかったから。」

と、光一君は苦笑いした。

「あたしも。」

「え?」

「あたしも、光一君のこと好きになるようにがんばるから。だから。」

あたしが原因で、

「そんな辛そうな顔しないでよ。」

「明菜ちゃん………。」

光一君の辛そうな顔なんて、大嫌い。

「明菜ちゃん。抱きしめていい?」

「……今日だけだよ。」

ギュッ

「俺、総ちゃんがうらやましい。スッゴく、スッゴくうらやましい。」

「うん。」

「俺、がんばるから。明菜ちゃんも心の準備しとってや。」

「うん。」


光一君の体は小刻みに震えていた。

多分泣いてたのかな?

この時あたしは、なんだか、光一君に心を揺さぶられる日はそう、遠くない気がした。