桧周さんは、卒業後は、家業に就く予定だったのだけど、本人の希望で、社会勉強もかねて、孝さまのボランティア団体に参加する予定にしていたはずなのに…。



まだ海外には行ってない、と聞いてはいたけど。


いつ行くのかしらと思っていたら、…就職したの?!



「まぁ、色んな事情もあるだろうから…。

無理強いできることではないからね」


と、綾人さんは残念そうに視線を宙に漂わせた。






「お帰り、琴湖」


家に帰ったら、珍しく父がいた。


父は、華道竹小路流の家元。



「お父様。ただいま帰りました」


よそ行きの着物を着てらっしゃるから、すぐに出かけるのだろうけど。


父は、ニコニコして言った。


「琴湖、決まったぞ」