「琴湖ちゃん、車椅子押すの上手いね」


綾人さんは、感心した様子で私を見た。



「課外学習で老人ホームに行ったとき、押し方を習ったんですの」


「そうなんだ。本当に助かったよ。ありがとう」


「いいえ。どういたしまして。

本屋にご用事が?」


私は、さっき自分が出てきた本屋に目をやった。



「うん。用事で近くまで来たもんだから、孝市郎の写真集が並んでるのを見てみようかなって思って」


「あら、奇遇。私も」


買ったばかりの写真集を手さげから取り出して見せた。



綾人さんが、あれ?って顔したから、
「うちに送られてきたほうは、兄が欲しがったから譲ってあげたの」と説明したら、
「そうか」と納得された。