桜音は優しく俺の手をぎゅっと握って話す。
「琥珀くんの人生は琥珀くんのもの」
「え?」
「だから琥珀くんが決めなきゃダメですよ。私のため何てダメですからねっ」
「でも、俺が医者になんねーと桜音といれないし……」
「それでもダメです!」
いたずらっ子っぽく笑った桜音は、キレイな黒髪をなびかせて俺に抱きつく。
細くて折れそうだ。
「だけど………私だって琥珀くんと…い、一緒にいたいので…」
「だから医者にならなきゃってか?」
「は、はい…」
「それじゃあ矛盾してる。桜音だって桜音の道進んだらいい」
俺が桜音に偉そうに言える立場じゃねぇけど、我慢しないでほしい。
前の桜音に戻ってほしくないから。
今のまま、素直に笑ってる桜音が好き。