「柚輝、今日もお前ン家でバイトしていい?」

「良い…と、いうかこっちは大歓迎。寧ろそっちが良いの?」

「時給500円で俺に限って飯付き!柚輝ン家の料理旨いし、ぜんっぜん良いじゃん!」

「いや、時給500円って安くない?」


 あたしの家は神社だ。地元ではかなり有名な神社で、最近はご利益があると地方にまで家の神社の名前が広がりだしている。
 だがその割にはスタッフが少なく、快斗一人が居るだけでかなり楽になる。スタッフが少ないという理由は多分、時給にある。
 ご縁がありますように、という意味でアルバイトさんの時給はたったの500円。最近は700円で少ない方だから500円なんて誰も見向きもしない。


「最近が高すぎるんだよ。ひと昔前はそれくらいだったって。てか、ゆずンとこは雰囲気も良いし、おじさんもおばさんもイイ人だからバイト目当てじゃなくても行きたくなる。」


 快斗はあたしの事を普段は柚輝って呼ぶ。学校では小林。中学までは柚輝だったけど、高校に入ってから小林って呼び出した。そして、たまに“ゆず”って呼ぶ事がある。
 その時がどんな時かは、まだ把握出来てない。15年間過ごしてても。本人に聞いてみても「いつでしょー」としらばっくれる。だから、気まぐれだと思う。


「婆様は?」

「ちょーっと怖いけど…優しい、馴染みやすい人。」

「……じゃ、あたしは?」


 腐れ縁と言うか、幼馴染みと言うか、はたまたバイト先の娘と言うか。少し気になった。


「わがままで、自分勝手だけど可愛い可愛い幼馴染み。」


 自分で言っといて恥ずかしくなったのか、快斗の顔はみるみる赤くなっていく。
 それが移る様に、あたしの顔も多分、赤くなっていただろう。