『宇宙に舞う無数のカササギは、ただあなたの機織る彩りだけを楽しみにしているのです』




一羽のカササギは、筆をおきました。

何をどのように書けば織姫さまに気持ちが伝わるのか、検討もつかないのです。



「ファンレターを書いているのか?」
後ろから覗き込む不粋な輩の声に、カササギは不機嫌な顔で振り返りました。


ファンレターなどと、安っぽい言葉を使ってくれるな。
これはもっと、もっと、崇高なものなのだから。


不粋なカササギは、ふふん、とひとつ笑って飛び去りました。
「邪魔をして悪かったな。俺は先に七夕の天気を占いに行ってくるよ」



――― 七夕の天気など、どうでもいいのに。


七夕のたった一日より、のこりの364日をどう過ごすかのほうが、姫にとっては大切なことではないのか。