名前を呼ばれて顔を上げた。


 ・・・最悪、最低・・・階段の数段上から小山紫苑が私を見ていた。


 号泣してるとこ見られた。


 逃げようと立ち上がり、小山紫苑を無視して渡り廊下に踏み出した。


 「どうして、泣いてるの?」


 小山紫苑は階段を駆け下り、私の手首を掴んだ。


 「はなしてよ」


 手首を乱暴に振りほどき、渡り廊下を突っ切る。


 小山紫苑はびっくりしたのかその場に立ち尽くしていた。


 ・・・違う、中庭をじっと見ていた。


 「ひょっとして、春風さんが泣いてたのって白根くんが原因?」


 小山紫苑から芹の名前が出て思わず振り返る。





 ★



 
 「とりあえず、これでも飲んで」


 小山紫苑はコーヒー牛乳を差し出した。


 「いらない。コーヒー嫌い」

 
 「そっか、じゃあ、僕のお茶と交換」