芹の口を開いた。


 ゆっくりと何かを話している。


 マルタは頷きながら聞いている。


 芹が口を閉じた。


 返事を待っているのだろうか、沈黙が続く。


 マルタが深呼吸するのが見え、その後、頷いた。


 芹の顔から緊張が消え、笑顔になっていく。


 今まで見たことのない位、優しいステキな笑顔だ。


 芹の笑顔が結果を物語っていた。


 あの2人上手くいったんだ・・・


 急に視界が歪んで、その場にしゃがみ込んだ。


 もう、これ以上、幸せそうな芹を見たくなかった。


 最悪。


 最低。


 やっぱり私、芹のことがすごく好きだったんだ。


 完璧、失恋じゃん。


 涙がぼろぼろとこぼれてきて自分でも情けないくらいだった。


 気の済むまで泣いたらもう泣くのは止めにしよう。


 私は強くなるんだから・・・


 「春風さん?」