出会ってからもう一週間もたっていた。
でも僕は、ベンチで彼女が現れないかと期待して詩を書いていた。
するとフッと僕の中に言葉が降りてきた。
   『君思う
僕は声に出して詠んだ。
     切ない心は
どこからか声が重なった。僕は思わず詠むのをやめた。が、もう一つの声は続けた。  
      茜空』
僕は、声のする背後をハッと振り返った。
すると、見覚えのある女性が立っていた。
「今日も、詩を書いてるんだあ。感心、感心☆」
彼女だった。
僕はうれしくなったが、極力顔に出さないように努力した。
「あ、どうも。おひさしぶりです。」
「ひさしぶりだね。あたし、図書館に本を返しに来たの。で、今日は詩人さんいるのかな?と思ってのぞいたわけ。」
「そうなんですか。」
「うん。ホントに好きなんだね、詩。」
「はい。俺、国語の先生に好きな先生がいて、その先生が教えてくれた詩がなんて深いんだろうって感銘を受けて。それで、俺も詩を書き始めたんです。」
「そうなんだ。やっぱ、将来は詩人さん?」
「いや、俺は子供たちに詩のすばらしさを伝える国語の先生になりたいんだ。」
「国語の先生?へえ、いいね。先生☆」
「あなたは何かなりたいものとか。将来の夢とかあるんですか?」
「あたし?う~ん。かわいいお嫁さんとか?絵を描くのがスキだからイラストレーターとか?」
「いいじゃないですか。かわいらしくって。今度、俺のイラスト描いてくださいよ。」
「え~?」
「冗談ですよ。素敵です。」
「ありがとう。」
彼女は照れて赤くなっている。