「なにもねえんなら、この動揺っぷりはなんなんだね。遼くん?」
僕は聡史に悟られたことを確信し、仕方なく打ち明けることにした。
「い、いやあ、実はさ。」
「なにかなぁ、遼くん。童貞でも卒業したかな?」
聡史はニヤニヤして冗談を言っている。
「そうなんだよ、昨日童貞をそつ…じゃなくて!」
「なんだ、まだ童貞なのか。」
「あのな…まあ、そうなんだけどさ…。」
僕はあきれ気味に言った。
「市立図書館横の公園あるじゃん。昨日そこで詩を書いてたんだけどさ。」
「お前あそこ好きだもんな。で?」
「詩を書いた紙が飛んでっちゃったんだよ。」
「うん。」
「それを女の子が拾ってくれてさ。」
「え、どんな女?かわいい系?ギャル系?萌え系?クールってのもいいなぁ」
「ああ、何系かといわれると…。モデル系?ほら、モデルの茉里奈みたいなさぁ。」
「ああ、かわいいねえ。俺、茉里奈タイプだぜ。紹介してくれよ」
「いや、知り合いじゃねえし。…ってそんなことはどうでもよくて。」
「どうでもいいのかよ。」
「まあ。で、その子が俺の詩を『いい詩だね』ってほめてくれて。それがすげえうれしくてさ。」
「なんだそれだけ?それはよかったな。」
聡史はつまらなそうに言った。