女の子はボソッとつぶやいた。


「……まぁ、覚えてるほうが奇跡か」


女の子は腕時計を見て、俺に向き直って言った。



「私、行かなくちゃ」


女の子は屋上を出て行こうとドアノブに手をかけた。


「は?……ちょっ!おい!!待てよ!!」


女の子はドアを開けて出て行く間際に微笑みながら言った。


「明日のお昼にここで。またね、零也くん」


そう言って、出て行った。


意味深な問題を残して行くなんて、納得できるか!


俺もドアを開けて階段を駆け下りる。


階段を降りきって、辺りを見まわす。


すると廊下の突き当たりの角に女の子の影が見えた。


俺は上下する肩をおかまいなしに、廊下を走る。


あと少しで追いつく。


でも角を曲がったときには女の子はいなかった。