……笑えばいいさ。


俺だって自分で言ってて恥ずかしいさ。


でも、この女の子はこうでも言わないとどこかに飛んでいってしまいそうだった。


女の子は笑いをこらえながら言った。



「れ、零也くん面白いね。いっつもスカしてるのに……。あははは!!お、お父さんみたいなこと言うんだもん」


誰がお前みたいなやつのお父さんになるか!!



そう言おうとして違和感を感じた。


あれ?


なんで………。


「なんで、俺の名前知ってんの?」


俺はまだ自分の名前なんてなのってない。


女の子は口をおさえて視線をおよがせる。


俺はもう一度同じ質問をした。



女の子はチラッと俺をみて、少し困ったように微笑んで言った。


「……私のこと知らない?ていうか覚えてない?」



女の子は腕時計をいじりながら、立ち上がって俺を見た。


どこかで………会ったことがあるのか?


俺の記憶のなかではこんな子には会ったことないと思うんだけど。


モンブランみたいな鮮やかな髪は肩より少し下でゆれている。


イチゴのキャンディみたいな、艶やかなピンクをした唇。

スッと通った鼻筋。


大きくて少し垂れている愛嬌のある目。



どんなに考えて思い出そうとしても、やっぱり見覚えなんてなかった。