木崎を送り届け家に帰る。

佳子が待っていた。

『どうだったの?』
『ああ、木崎、かわいそうな位頑張ってた。
あいつが今いなかったらあの家成り立たないよ』
『え?』
『木崎のお姉さん、なんかしっかりしてなくてな。
木崎が取り仕切ってたわ。
あいつだってホントは泣きたいだろうに泣かずに色々やってた。
お父さん残されたから気の毒だわ』
『気の毒ね。
…ねぇ?』

佳子が一呼吸おいて話し始める。

『木崎さんと、昔何かあったの?』
『は?』
俺も痛いところを突かれた気がした。

『あなたの慌てようったら今まで見たことないくらいだったから。
木崎さんてあなたにとってなにか特別なんじゃないかと』
女の勘と言うやつか。

『木崎はさ。
俺が若い頃見た中で一番大変だった子なんだよ。
問題児ではなかったけど
初めてじゃないかな。不登校の教え子の。
そのくせ妙に頑張る子だったし。
今も不登校の子関わるときにあいつ思い出すんだよ。
だから特別なんじゃないかと、自分でも思う。』
木崎が特別だ、ということは認めた。

『ふーん。
私も先生じゃないからわかんないけどさ。
印象に残るお子さんだったんだね。』
『できの悪い手のかかる子ほど印象に残るもんだよ。』

『昔の彼女だったりして、なんて思ってさ』
と佳子は笑った。
『んなわけないよ。あいつは15も下のガキだから。』

そのガキを無理矢理大人にしたのはこの俺だ。

昔の彼女程度だったら俺はあんなにならなかったはずだ。
そんな…そんな甘い繋がりじゃない。