『ねぇ、せんせい?』
ユウマ、と呼ばれていた木崎の甥っ子が俺に話しかけてきた。
『かなちゃん、なんでせんせいの前だとママみたいに泣いたのかな?』
『え?』
『ママはばあば死んでからずーっと泣いてるの。
でもかなちゃんは泣かなかったの。
ユウマに大丈夫だよ、っていってくれて。
でもね、せんせいの前で泣いてたの、ユウマ見たよ。
かなちゃんもママみたいにずっと泣くのかな?』

そうか…木崎は泣けなかったんだ。
自分がしっかりしなければ、ときっと泣かずにいたんだ。

『あのね、ユウマ君。』
俺は木崎の甥っ子に話しかけた。
『きざ…かなちゃんとおじちゃんはね。
とっても仲良しなんだ。
かなちゃん昔から辛いときおじちゃんのところにきて泣いてたんだ。
でも、おじちゃんの前で泣くとまた元気になるから。大丈夫だよ。』
『へぇ~。んじゃかなちゃん元気になったの?』
『あぁ。だから、大丈夫だよ』
そう俺が言うとユウマくんは
『よかった~!』
とニコニコしていた。

『ユウマ、先生といたの?』
『あ、かなちゃん!』
『ごめん、先生。相手にしてくれてたの?』
『あぁ。』
『先生、ごめんね。バタバタしてて。
今から出かけるから。』
『どこへ行くんだ?』
『あぁ、父の薬を取りに薬局へ…

『俺乗せていってやるよ。』
と俺はいった。
『え?なんで?大丈夫だよ』
『お前さ、こういう状態で出掛けたらお前のことだから事故でも起こしかねない。
一緒にいくから』

『え…でも』
『いいから。』

もちろん、木崎に話した理由もあった。
ただ、それよりも、少しだけここの家から出してやりたかった。
多分木崎一人で頑張っているのだろう。

木崎はお姉さんのところにユウマくんを連れていった

車を用意し、木崎を助手席に乗せた。