「もしかして……嘘?」
あたしがそう聞くと、翼はあたしからそっと目をそらす。
小さい頃から嘘が苦手な翼。
嘘をついた時は目をそらして、少し黙り込む。
それが翼。
「何で?」
こんな嘘ついたって何もならないのに。
それなのに、どうしてわざわざすぐバレるようなウソを……
「……………………」
「ねぇ、翼……」
「……泉が……」
「え?」
「……泉、さっき泣きそうな顔してたから」
……思わず言葉を失う。
翼は眉を八の字に下げ、心配そうな……それでいて悲しそうな瞳であたしを見る。
あたしの……ため?
そのためにわざわざ……?
「……俺、泉のそんな顔見たくないから。
だから、思わず……」
……ごめん。と小さな声で翼が謝る。
体はあたしより大きいのに、こういう時はいつもシュンとした子犬のように見えてしまう。