カメラをゆっくり下ろせば、ファインダー越しよりも遥かにクリアに映る夏の姿。


夕陽に照らされて染まるブラウンの髪
の隙間から覗いた眸は…


「夏…?」


私を見つめたまま、微動だにしない。


どうしよう…。もしかして勝手に
撮ったこと怒ってるのかな…。


何も反応を示さない夏に不安が過る。


「な、」

『今撮った?』

「っ…」


怒って…る……っ。


「ご…めん、…すぐ消す…っ」


カメラを操作して撮ったばかりの
1枚の写真を表示した。



削除しますか?

【Yes】【No】



「(Yes…)」


カーソルを合わせて決定を押そうとした
その瞬間。


『怒ってないよ、悠』

「っ、」


その手は夏のそれによって静かに
止められていた。