『ちっさ』
「当たり前でしょ」
屈んだ夏の横にそっと立つ。
『よしよーし』
まるで赤ちゃんをあやすみたいに子猫の
首元をくすぐる夏に嬉しそうに身を
捩った子猫。
『おりゃおりゃー』
「…」
不覚にも可愛いと思ってしまった。
……夏のことを。
「…ありえない……」
『は?なに?』
「……なんでもない」
『変なのー』
うるさい、そう思いながらふいっと
視線を夏たちから外せば。
「(夕陽…綺麗)」
少し高台になっているこの場所は、
街の一部が見渡せるようになっていて。
茜に染まる街。
声にはならない感動が心に溢れた。