『あ』


突然、声を発した夏に驚いてビクリと肩が
震えた私をよそに、グッと繋いだ手を引いて足早に歩き出した夏に声を上げる。


「ちょ、っと!いきなり…!」

『シー』

「?」


腕痛いし。何なの、一体。

思わず眉根を寄せる。…でも。


『見て、悠』


夏の指差す方を見て、夏に対する
苛つきなんてどこかへ消えてしまった。



夏が見つけたのは


『ニャー』

「可愛い…」


とてもとても小さくて可愛らしい
子猫だった。


『はは、悠わかりやすい』

「な、によ…いいでしょ別に…」


可愛いものは可愛いのだ。


『…本当、自分が今どんな顔してるか
わかってる?』

「…。なに不細工だって言いたいの?」


そんなこと、今更言われなくても
わかってるし。


ケンカなら買うけど。という意味を
込めながら夏を睨めば


『…はあ。無自覚って怖い』


何故かため息をつかれた。


「何それ、意味わかんない」

『そのままの意味だよ。ねー』


ちらりと私を一瞥した夏はすぐにまた
視線を子猫に戻してそのまま子猫を
抱き上げた。