唇と唇が触れ合う寸前のところで
夏の動きが止まって。


『残念』


本当にそう思っているのかどうか
疑わしい。


きっと私をからかって遊んでいるだけ
なのだ、夏は。だから「残念」だなんて
本当は思っていない。



「嘘つき…」

『嘘じゃないって』


小さく困ったように微笑まれては、
何て返せばいいかわからなくなる。



———…夏は、何がしたいのだろう。


出会ってまだ1週間しか経っていないのに
彼はどうして私なんかに…



「なんで夏は私にキスするの?」

『なんでだと思う?』


ほら、またそうやってはぐらかす。




「夏は…私のことが好きなの?」






『…———さあ、どうでしょう』



決して答えをくれない夏。



その言葉も、仕草も。
なんだか猫のようで。


口角を上げて笑う夏をまた睨む。