「ふざけてないで、離して夏」
この人相手に感情的になるのは得策
ではない。そう判断した私はなるべく
冷静に彼に告げる。が。
『ふざけてない、って言ったら?』
さっきまでの意地悪な笑みはどこへやら。
突然、真剣な表情になる夏はやっぱり…
「狡い奴…っ」
『知らなかった?』
捕食者のそれをみせた眸に囚われた私は、
そのまま噛み付かれるようにキスされた。
「ふ……、ん…っ」
喘ぎにもならない声が唇の端から
零れ落ちる。
抵抗したくても、両手が拘束されて
しまえば思うように動けない。
くすり、と。夏が笑った気配がした。
むかつく。こんな奴にされるがままなんて
私のプライドが許さない。
『…っ…!』
ガリッという音と共に離れた夏の唇の端
からはじわりと血が滲んでいた。
「…っ、ざまーみろ」
『……』