『ふーん。それで』
やばい、これは。
この夏の笑い方は良くないことを
考えている時のものだ。
「夏…!離してってば」
『いやー』
「ちょっと、…っ!」
ぐいっと摑まれた腕を引っ張られて、
咄嗟のことに眸を瞑れば背中に軽い衝撃。
閉じた眸を開ければあまり見慣れない
教室の天井が映った。
『いい眺め』
頭上から聞こえるのは夏のなんとも
楽しそうな声。
「な、つ!」
両手を机に縛り付けるように拘束された
私は、夏によって押し倒されていた。
「な、に…!離せ…っ」
『シー』
片手で簡単に私の両手首を纏め上げる夏に
彼も男なのだと痛い程感じさせられて
不愉快になる。
早朝の教室には、まだ誰も来ない。